それらは筆のあとの柔かく温かな文字で書かれてあつて、声に出して読むと、ちやうどその字体のやうに、素直であたたかであはれ深い言葉である。
様々な話がその中には語られてある。
妻や子をなくした男の話、夫をなくした妻やその子供の話、遠くの島へ流された父を、はるばると探ねて行く子供の話、飢饉や火事や疫病で一度に大勢の人が死んでいつた話、何となく生きてゐるのが寂しくなつて、他国へあてもなく旅してゆく人の話など……かういふ気の毒な話に、栄蔵はとりわけ心をひかれる。
それらは筆のあとの柔かく温かな文字で書かれてあつて、声に出して読むと、ちやうどその字体のやうに、素直であたたかであはれ深い言葉である。
様々な話がその中には語られてある。
妻や子をなくした男の話、夫をなくした妻やその子供の話、遠くの島へ流された父を、はるばると探ねて行く子供の話、飢饉や火事や疫病で一度に大勢の人が死んでいつた話、何となく生きてゐるのが寂しくなつて、他国へあてもなく旅してゆく人の話など……かういふ気の毒な話に、栄蔵はとりわけ心をひかれる。