戀といふ程のことをした經驗のない彼には、この町のどこにもそれとなく見て別れを告げねばならぬやうな少女はゐないのであるが、通りのずつと向うの方に、まだ顏は見えぬけれど着物の色彩で少女と知れる姿が現はれると、自分の愛人ではないかと思つて見たりするのである。
そして金太郎は、更めて自分が專門學校生徒である誇りにうつとりする。
やがて人通りの餘りない、片側に工場の黒板塀が續き、片側は畑を間にさしはさんで住宅が數軒ならんでゐる、町で一番長い坂道の上に出た。
戀といふ程のことをした經驗のない彼には、この町のどこにもそれとなく見て別れを告げねばならぬやうな少女はゐないのであるが、通りのずつと向うの方に、まだ顏は見えぬけれど着物の色彩で少女と知れる姿が現はれると、自分の愛人ではないかと思つて見たりするのである。
そして金太郎は、更めて自分が專門學校生徒である誇りにうつとりする。
やがて人通りの餘りない、片側に工場の黒板塀が續き、片側は畑を間にさしはさんで住宅が數軒ならんでゐる、町で一番長い坂道の上に出た。