金太郎は路傍の道しるべの石に片足をかけて、自轉車に跨つたまゝ憩みながら、今晩たつといふ返事をした。
山下先生に別れると、額にかかつてゐた髮をうしろへ掻きあげて、豐富な髮の毛が外にはみ出さぬ樣に丁寧に帽子をかむり石を蹴つてひよいと體を浮かしまた走り出した。
そして今別れた愛想のよい山下先生が、金太郎の入學を喜んでくれた時、この町で一番偉くなつてゐるのは××大學の教授をしてゐられる林信助さん、その次に偉くなるのは君だとみんなが云つているから、しつかり勉強したまへ、と言つた言葉を憶ひ出し、惡い氣持はしなかつたのである。