ところが、ほんとうにねむってしまったのはマタンだけで、つれの男はさいしょから、うそのいびきをかいていたのでありました。
ま夜中のころ、宿屋のまどを、中からおしあけて、こうもりのように、ひらりととびおりた人かげを、銀のフライパンのようなお月さんは、高いところから見たのでありました。
その人かげは、明るいところをおそれるように、いけがき、やぶ、馬小屋、へいのかげなどの暗いところをもとめながら、ひらひらと見えかくれしていましたが、やがて、森の深いやみの中に、すいこまれるようにきえていってしまいました。