風がどうと吹いてぶなの葉がチラチラ光るときなどは虔十はもううれしくてうれしくてひとりでに笑へて仕方ないのを、無理やり大きく口をあき、はあはあ息だけついてごまかしながらいつまでもいつまでもそのぶなの木を見上げて立ってゐるのでした。
時にはその大きくあいた口の横わきをさも痒いやうなふりをして指でこすりながらはあはあ息だけで笑ひました。
なるほど遠くから見ると虔十は口の横わきを掻いてゐるか或いは欠伸でもしてゐるかのやうに見えましたが近くではもちろん笑ってゐる息の音も聞えましたし唇がピクピク動いてゐるのもわかりましたから子供らはやっぱりそれもばかにして笑ひました。