もしもほんの少しのはり合で霧を泳いで行くことができたら一つの峯から次の巌へずいぶん雑作もなく行けるのだが私はやっぱりこの意地悪い大きな彫刻の表面に沿ってけわしい処ではからだが燃えるようになり少しの平らなところではほっと息をつきながら地面を這わなければならないと諒安は思いました。
全く峯にはまっ黒のガツガツした巌が冷たい霧を吹いてそらうそぶき折角いっしんに登って行ってもまるでよるべもなくさびしいのでした。
それから谷の深い処には細かなうすぐろい灌木がぎっしり生えて光を通すことさえも慳貪そうに見えました。