彼女はよく「ちょっと見て上げましょうか」と云いながら、小楊枝入を取り扱うような手つきで、短冊形の薄い象牙札を振り出しては、箱の大きさと釣り合うようにできた文句入の折手本を繰りひろげて見た。
そうしてそこに書いてある蠅の頭ほどな細かい字を読むために、これも附属品として始めから添えてある小さな虫眼鏡を、羽二重の裏をつけた更紗の袋から取り出して、もったいらしくその上へ翳したりした。
お延が津田と浅草へ遊びに行った時、玩具としては高過ぎる四円近くの代価を払って、仲見世から買って帰った精巧なこの贈物は、来年二十一になる継子にとって、処女の空想に神秘の色を遊戯的に着けてくれる無邪気な装飾品であった。